
家賃管理表は部屋×月の1枚表にせず、請求と入金を別シートに分けて請求IDで消し込む形で作ります。合算入金や一部入金が来ても、滞納と未収額を数式で拾えます。
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家賃管理表は「部屋×月」の1枚表で作らない
家賃管理表は、請求と入金を別々のシートに分け、両者を請求IDでつなぐ形で作ります。
部屋を縦・月を横に並べてチェックを付ける1枚表は、入金が素直なうちしか機能しません。
無料で配られている家賃管理表には、この「部屋×12か月」の形がよく見られます。
1マスに入るのは1回分の入金だけなので、2か月分がまとめて振り込まれたり、家賃の一部だけが入ったりした時点で、どのマスに何を書くかが担当者の判断になります。
しかもマスには金額しか残らないため、期日から何日過ぎているかを数式で出せません。
| 比べる点 | 部屋×月の1枚表 | 請求と入金を分けた表 |
|---|---|---|
| 1行の意味 | 1部屋の1年分 | 請求は1契約×1か月、入金は通帳の明細1件 |
| 合算入金・一部入金 | マスに書き分けられない | 消込シートに充当先を1行ずつ残す |
| 名義違いの振込 | 誰の入金か記録に残らない | 名義対応シートに根拠ごと残す |
| 滞納の経過日数 | 出せない | 支払期日の列から数式で出る |
| 家賃改定・入退去 | 行と列の作り直し | 請求行を足すだけ |
💡 ここがポイント
家賃管理表の役目は「入金を記録すること」ではなく「どの請求が、いくら、何日残っているか」を確定させることです。そのためには、請求と入金を別の表に持ち、つなぎ目(消込)を記録する必要があります。
この記事では家賃の請求・入金・滞納に絞り、実際に作る表の中身を説明します。
5つのシートと列の設計
シートは「契約」「請求」「入金明細」「消込」「名義」の5つに分け、1行の意味をシートごとに固定します。
行の意味が混ざると、集計の数式が成り立たなくなるからです。

各シートの1行の意味と、最低限持たせる列は次のとおりです。
| シート | 1行の意味 | 主な列 |
|---|---|---|
| 契約 | 1契約 | 契約ID・物件名・部屋番号・契約者名・家賃・共益費・駐車場代・月額請求額・支払期日の決まり・保証会社 |
| 請求 | 1契約×1か月 | 請求ID・契約ID・対象月・請求額・支払期日・消込額・未収額・状態・経過日数 |
| 入金明細 | 通帳の明細1件 | 明細No・入金日・振込名義・金額・候補契約ID・消込済額・未消込額 |
| 消込 | 入金を請求に充てた1回分 | 明細No・請求ID・充当額・判断理由 |
| 名義 | 振込名義1つ | 振込名義(通帳の表記どおり)・契約ID・確認日と確認方法 |
契約IDは「C001」のように、部屋番号や名前に左右されない値で振ります。
部屋番号を使うと、同じ部屋に次の入居者が入ったときに過去の請求と混ざります。
請求IDは「契約ID+対象月」で作るので、請求シートに =COUNTIF(A:A,A2)>1 の列を足せば、同じ請求の二重作成を数式で拾えます。
入居者が数戸で、合算入金も一部入金も起きていないなら、消込シートを省いて請求シートに入金日と入金額を直接書く形でも回ります。
ただし、最初の合算入金が来た日に5シート型へ移る前提で、請求IDの列だけは最初から作っておいてください。
請求シートの数式
未収額は「請求額 − その請求に消し込んだ額」で出し、状態と経過日数はこの未収額と支払期日から自動で判定させます。
人が書き込むのは契約IDと対象月だけです。
請求シートを2行目から入力する前提で、各列の数式は次のとおりです。
支払期日は、設例として「前月27日までに当月分を払う」契約で書いています。
| 列 | 内容 | 数式(2行目) |
|---|---|---|
| A | 請求ID | =B2&"-"&TEXT(C2,"yyyymm") |
| B | 契約ID | 入力 |
| C | 対象月 | 入力(その月の1日の日付) |
| D | 請求額 | =XLOOKUP(B2,契約!A:A,契約!H:H) |
| E | 支払期日 | =DATE(YEAR(C2),MONTH(C2)-1,27) |
| F | 消込額 | =SUMIFS(消込!C:C,消込!B:B,A2) |
| G | 未収額 | =D2-F2 |
| H | 状態 | =IF(G2<0,"過入金",IF(G2=0,"入金済",IF(TODAY()<=E2,"期日前",IF(F2>0,"一部入金","滞納")))) |
| I | 経過日数 | =IF(AND(G2>0,TODAY()>E2),TODAY()-E2,"") |
契約シートのH列は、家賃・共益費・駐車場代を足した月額請求額です。
支払期日が前月末(当月分を前月末までに払う契約)ならE列は =EOMONTH(C2,-1)、当月末なら =EOMONTH(C2,0) に置き換えます。
期日が土日祝なら翌営業日とする契約では、=WORKDAY(DATE(YEAR(C2),MONTH(C2)-1,27)-1,1,祝日一覧) のように祝日の一覧を別に持たせて計算します。
いちばん見落とされやすいのはD列です。
請求行を作った直後は数式で契約シートから引いて構いませんが、そのまま残すと家賃を改定した日に、過去の請求額まで新しい家賃に書き換わります。
請求行を作ったら、D列は「値として貼り付け」で確定させてください。
入金消込の手順と設例
入金は通帳の明細を1件ずつ入金明細シートへ写し、どの請求に充てたかを消込シートに1行ずつ書きます。
1件の入金を2つの請求に充てるなら、消込シートの行も2行になります。
入金明細シートのE列には、名義シートから候補の契約IDを引く =XLOOKUP(C2,名義!A:A,名義!B:B,"要確認") を入れます。
F列の消込済額は =SUMIFS(消込!C:C,消込!A:A,A2)、G列の未消込額は =D2-F2 です。
G列が0でない明細だけを絞り込めば、それが「人が判断すべき入金」の一覧になります。
ここからは、3戸の設例で流れを追います。
金額と名前はすべて説明用の架空の設例です。
| 契約ID | 部屋 | 月額請求額の内訳 | 月額請求額 |
|---|---|---|---|
| C001 | 101 | 家賃65,000円+共益費3,000円 | 68,000円 |
| C002 | 102 | 家賃70,000円+共益費3,000円 | 73,000円 |
| C003 | 201 | 家賃72,000円+共益費3,000円+駐車場代8,000円 | 83,000円 |
11月分の支払期日は10月27日です。
11月1日の時点で、通帳には「サトウ ケンジ」から68,000円、「ヤマダ ハナコ」から70,000円の入金がありました。
101号室は名義も金額も一致するので、消込シートに1行書いて「入金済」になります。
102号室の契約者は山田太郎さんで、振込名義は家族の名前です。
入居者に確認できたら、名義シートに「ヤマダ ハナコ → C002」と確認日・確認方法を1行書き、翌月からは候補契約IDに自動で出るようにします。
102号室は70,000円を充てても3,000円足りないため、状態は「一部入金」、経過日数は5日と表示されます。
201号室は入金がないので「滞納」です。
11月10日、201号室の入居者から166,000円が振り込まれました。
事務担当
「166,000円なら11月分と12月分だよね。とりあえず11月分の請求に全額充てておこう」
ハリーアンド
1行で11月分に166,000円を充てると、11月分は「過入金」になり、12月分は未収のまま残って、期日の翌日の11月28日には「滞納」として一覧に載ります。消込シートには83,000円ずつ2行に分けて書き、判断理由に「入居者に電話確認、11月分と12月分の合算」と残してください。
月額83,000円のちょうど2か月分なので、入居者に確認のうえ、11月分と12月分に83,000円ずつ充てます。

| 明細No | 請求ID | 充当額 | 判断理由 |
|---|---|---|---|
| 1105 | C003-202611 | 83,000円 | 入居者に電話確認、11月分と12月分の合算 |
| 1105 | C003-202612 | 83,000円 | 同上 |
これで11月分は「入金済」、期日が11月27日の12月分も期日前に「入金済」になります。
12月分の請求行がまだ無いと充て先が作れないため、請求行は少なくとも翌月分まで先に作っておきます。
古い月から充てるか、入居者の指定に従うかといった充当の決まりも、判断理由の列に残る形にしておくと、後から誰が見ても追えます。
滞納を毎朝ひと目で拾う仕組み
滞納は、請求シートから「未収額が残っていて期日を過ぎた行」だけを抜き出す一覧で拾います。
一覧を見るだけで、誰に何日分の連絡をすべきかが決まる状態を作ります。
Microsoft 365またはExcel 2021以降なら、別シートに次の1式で滞納一覧ができます。
=FILTER(請求!A2:I2000,(請求!G2:G2000>0)*(請求!E2:E2000<TODAY()),"滞納なし")
請求シートの数式は、請求行を作るときにその行だけへコピーします。
データの無い行まで数式を下ろしておくと、空行がエラーを返し、この一覧もエラーになります。
契約シートにも、期日を過ぎた未収の合計と月数を出しておきます。
| 列 | 内容 | 数式(2行目) |
|---|---|---|
| M | 期日超過の未収残高 | =SUMIFS(請求!G:G,請求!B:B,A2,請求!E:E,"<"&TODAY(),請求!G:G,">0") |
| N | 滞納月数 | =COUNTIFS(請求!B:B,A2,請求!G:G,">0",請求!E:E,"<"&TODAY()) |
M列に「G列が0より大きい」条件を入れるのは、過入金の行(G列がマイナス)と相殺されて、滞納額が小さく出るのを防ぐためです。
設例の166,000円を11月分の1行に全額充ててしまった場合、この条件が無い式では11月28日の201号室の残高が0円と出ますが、条件を入れれば12月分の83,000円が残高に出ます。
連絡した日・相手・約束された入金日は、契約IDをキーにした督促記録のシートに1行ずつ残します。
家賃の債権は、民法第166条第1項により、権利を行使できることを知った時から5年で時効にかかります。
古い未収を期日と経過日数ごと追える記録は、督促の初動だけでなく、回収できる権利を守るための前提でもあります。
💡 経営者・オーナーの方へ
見るべき数字は1つで足ります。「期日を過ぎた未収の合計が、今日いくらで、いちばん古いものが何日目か」です。これを毎朝答えられない状態は、事務の手間の問題ではなく、家賃という収入の回収を担当者の記憶に預けている状態です。
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確定申告と消費税のために足しておく列
個人オーナーや課税事業者の管理会社は、支払期日と税区分の2つを列で持っておくと、決算や申告のたびに表を作り直さずに済みます。
どちらも税のルールが「対象月」ではない基準で動くからです。
| 足す列 | 理由 | 一次情報 |
|---|---|---|
| 支払期日(請求シートE列) | 支払日が契約で決まっている家賃の収入計上時期は、原則としてその支払日 | 国税庁 タックスアンサーNo.1376(所得税基本通達36-5) |
| 税区分(契約シート) | 住宅の家賃は消費税が非課税。駐車場代を家賃と別に受け取る場合は、原則として課税 | 国税庁 タックスアンサーNo.6225、消費税法基本通達6-13-3 |
設例の契約では、翌年1月分の家賃の支払期日は12月27日です。
この場合、1月分の家賃は原則として期日の属する年の収入になるため、年間の集計は対象月ではなく支払期日の列で =SUMIFS(請求!D:D,請求!E:E,">="&DATE(2026,1,1),請求!E:E,"<="&DATE(2026,12,31)) のように取ります。
未収のままでも、支払期日が来た家賃は原則としてその年の収入に入る点にも注意が必要です。
収入計上時期には一定の要件のもとで認められる例外的な扱いもあります。申告に使う前に、自社の契約と処理方法が原則どおりでよいかを税理士に確認してください。
駐車場代を契約シートで家賃と別の列にしておくのは、この課税・非課税の線引きを後から分けられるようにするためです。
エクセルで回せなくなる目安
この5シート型でも回らなくなるのは、戸数よりも「人が判断する入金」と「表を触る人」が増えたときです。
次のどれかに当てはまったら、仕組みの見直しを検討する段階です。
- 消込シートの「判断理由」が空欄のまま埋まらず、なぜその請求に充てたかを後から説明できない
- 複数の担当者が同じファイルを同時に開いて上書きし合う
- 翌月分の請求行を先に作る運用が回らず、合算入金や前払いが来ても充て先の行がない
- 保証会社からのまとめ送金で、1件の入金が何十もの請求にまたがる
入金消込・契約更新・オーナー報告まで含めた物件管理全体をエクセルで続ける限界と、脱エクセルの判断基準は不動産の物件管理をエクセルでやる限界と脱エクセルの判断基準とはで詳しく説明しています。
移行するにしても、請求ID・名義の対応表・消込の判断理由がそろった表は、そのまま新しい仕組みへの移行データになります。
まとめ 消込の判断を「表に残す」ところから始める
家賃管理表は、契約・請求・入金明細・消込・名義の5シートに分け、請求IDで入金を消し込む形にすると、合算入金や一部入金が来ても滞納と未収額を数式で拾えます。
作り始めるなら、請求シートに請求IDと支払期日の列を足し、請求額を値で確定させるところからで十分です。
逆に部屋×月の1枚表のままだと、どの入金をどの月に充てたかは担当者の記憶にしか残りません。
滞納に気づくのが遅れ、5年の時効が近づいた古い未収を、期日と経過日数から追えなくなります。
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よくある質問
- Q. 家賃管理表の無料テンプレートをそのまま使っても大丈夫ですか?
- A. 部屋を縦・月を横に並べてチェックを付ける形のテンプレートは、毎月きっちり1回ずつ全額が入る物件なら回ります。ただ、2か月分の合算入金や一部入金、家族名義の振込が1件でも混ざると、1マスに1回の入金しか書けない前提が崩れます。テンプレートを使うなら、請求と入金を別シートに分け、その対応を記録する消込シートを足してから使うのが安全です。
- Q. 家賃管理表の数式はXLOOKUPが使えない古いExcelでも作れますか?
- A. 作れます。XLOOKUPとFILTERはMicrosoft 365とExcel 2021以降の関数ですが、XLOOKUPはINDEXとMATCHで置き換えられます。請求額の参照なら =INDEX(契約!H:H,MATCH(B2,契約!A:A,0)) で同じ結果になります。滞納一覧は、請求シートの状態列をオートフィルターで「滞納」と「一部入金」に絞れば代わりになります。
- Q. 滞納している家賃は、いつまで請求できますか?
- A. 民法第166条第1項により、債権は権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年のいずれか早い方で時効にかかります。家賃は支払期日が来れば請求できることを貸主が知っているのが通常なので、実務上は各月の支払期日から5年が目安になります。ただし請求や承認の有無で扱いが変わるため、長期の滞納は弁護士など専門家に相談してください。管理表の期日と経過日数の列は消さずに残します。
- Q. 家賃管理表は確定申告にも使えますか?
- A. 使えますが、集計の基準日に注意が必要です。国税庁タックスアンサーNo.1376では、契約や慣習で支払日が定められている家賃の収入計上時期は、原則としてその支払日です。前月末に翌月分を受け取る契約なら、1月分の家賃が前の年の収入になることがあります。請求シートに対象月とは別に支払期日の列を持たせておけば、期日の年で集計できます。例外的な扱いもあるため、最終判断は税理士に確認してください。
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