
落とし穴は、調査報告書と重要事項説明書を別々に手入力する構造です。報告書の行を宅建業法35条の項目順で作り、重説へは同じセルを参照で流してください。
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物件調査報告書のエクセルで起きる転記ミスの多くは、担当者の注意力ではなく、調査メモ・報告書・重要事項説明書に同じ値を何度も打ち直す構造から生まれます。
物件調査報告書は「重要事項説明書の項目順」で作る
結論:重要事項説明書に載せる事項は宅建業法35条1項で号ごとに決まっています。調査報告書の行もその号の並びで作るのが、転記ミスを防ぐ出発点です。
物件調査は、法務局・役所・インフラ事業者・現地・売主や管理会社と、調べる場所ごとに作業が分かれます。
そのため報告書のエクセルも「法務局シート」「役所シート」のように調査先ごとに作られがちです。
ところが最終的に転記する先の重要事項説明書は、調査先ではなく条文の号の順に並んでいます。
並び順が違う2つの書類の間で値を写すから、どの行をどこへ写したかを人が覚えておく必要が生まれます。
35条1項の説明事項は、一号から十四号までに「六の二」を加えた15の号です。
調査先との主な対応は次のとおりです。

| 調査先 | 主な確認資料・確認内容 | 35条1項の主な対応 |
|---|---|---|
| 法務局 | 登記事項証明書・公図・地積測量図・建物図面 | 一号(登記された権利・所有者)・三号(私道部分の持分) |
| 役所 | 用途地域・建ぺい率・容積率・道路種別・災害警戒区域・ハザードマップ | 二号(法令上の制限)・三号(公道・私道の別)・十四号(省令事項) |
| インフラ事業者 | 上水道・下水道・ガスの引込みと整備の見通し | 四号(飲用水・電気・ガス・排水) |
| 現地 | 接道の幅・境界標・越境・私道の状況 | 二号・三号の裏付け |
| 売主・管理会社 | 管理規約・修繕積立金・建物状況調査・石綿調査や耐震診断の記録 | 六号(区分所有)・六の二(既存建物)・十四号 |
💡 ここがポイント
調査先ごとのシートを作るのは構いません。ただし、どの行にも「35条の何号に対応するか」の列を必ず持たせてください。この1列があるだけで、重説側の欄と報告書の行が1対1でつながります。
二号の「法令上の制限」と十四号の省令事項が抜けやすい
結論:抜けやすいのは、対象の法律が多い二号と、省令で項目が追加されてきた十四号です。この2つは調査項目を固定リストで持つ必要があります。
二号の対象は宅建業法施行令3条に列挙されています。
売買・交換について私たちが施行令3条1項を数えたところ、都市計画法・建築基準法をはじめ一号から六十四号まで64の号がありました。
もちろん毎回すべてに該当するわけではありません。
しかし「該当しない」と判断した根拠を残さないと、後から点検する人には調べたのか飛ばしたのかが分かりません。
十四号は、施行規則16条の4の3が契約の種類ごとに項目を定めています。
建物の売買であれば、一号から六号(三の二を含む)の7項目が対象です。

このうち水害ハザードマップ上の所在地は、2020年8月28日施行の改正で加わりました。
国土交通省のQ&Aでは、浸水想定区域の外であっても図面上の位置を示すことが求められています。
使う地図は、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」とQ&Aが示すとおり、市町村が公表している最新のものです。
つまり「区域外だから書かない」は通用せず、どの版の地図を見たかまで記録に残す必要があります。
よくある自問
「ハザードマップは役所で見たし、区域外だった。報告書には何も書かなくていいのでは?」
ハリーアンド
区域外でも位置を示す説明が要ります。水害ハザードマップは洪水・雨水出水(内水)・高潮の種類ごとに作られ、物件が複数のマップに含まれるならマップごとに1行ずつ持ちます。状態は「該当あり」とし、調査結果に「浸水想定区域外(○○市洪水ハザードマップ 令和○年○月版で位置確認)」と、見た地図の名称・公表年月・確認日を残してください。空欄や「該当なし」にすると、説明すべき行が重説へ流れません。市町村がマップを作成していない場合も状態は「該当あり」とし、調査結果に作成されていない旨を記録します。
調査報告書エクセルに持たせる7つの列
結論:調査結果に加えて「対応する号」「調査先」「確認資料」「調査日」「状態」の5列を最低限持たせ、参照用の「項目ID」と合わせた7列で行ごとに漏れを見ます。
私たちが帳票のデータ化を設計するとき、最初に決めるのは見た目ではなく1行の意味です。
物件調査報告書なら「1行=重要事項説明書の1つの説明項目」と決めると、あとの設計がすべて素直になります。
| 列 | 入れる内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 項目ID | 35-02-01 のような固定の番号 | 重説側から参照するキー |
| 35条の号 | 一号・二号・六の二 など | 重説の欄との1対1対応 |
| 調査先 | 法務局・役所・インフラ事業者・現地・売主 | 誰に何を聞くかの段取り |
| 確認資料 | 登記事項証明書・ハザードマップ(名称と公表年月) | 根拠の版を残す |
| 調査日 | 2026/11/04 の形式 | 説明時点で古くないかの判断 |
| 状態 | 該当あり/該当なし/未調査 の3択 | 空欄の意味を一つに決める |
| 調査結果 | 説明に使う文章・数値 | 重説へそのまま流す値 |
状態の列は、エクセルの「データの入力規則」でリストから選ばせてください。
自由入力にすると「なし」「該当無し」「-」が混在し、集計も点検もできなくなります。
重要事項説明書側のセルは、報告書の調査結果のセルを項目IDで参照する式にします。
XLOOKUP関数が使える版なら、項目IDをキーに調査結果を引く1本の式で足ります。
設例:中古戸建1件で、手で打ち直す回数を数える
結論:転記の手間は「調査項目の数×打ち直す回数」で決まります。参照で流す設計に変えると、打ち直す回数が書類の数に比例しなくなります。
ここからは考え方を示すための設例で、実在の会社の数値ではありません。
中古戸建の売買仲介1件で、調査報告書の行が40行あるとします。
現地や役所で取ったメモを報告書に打ち、さらに報告書から重要事項説明書へ打ち直す運用なら、手入力は次の回数になります。
重説を参照で流す設計に変えるだけで、重説への打ち直し40回が消え、手入力は80回になります。
さらに現地や役所で報告書のエクセル(タブレット等)へ直接入力してメモの工程もなくせば、手入力は40回で済みます。
減るのは入力の手間だけではありません。
打ち直しのたびに生まれる食い違いの機会そのものがなくなるため、宅建士が報告書と重説を突き合わせる点検の範囲も狭まります。
決裁者の目線で言えば、問題は担当者の丁寧さではありません。案件が1件増えるたびに同じ値を何度も打たせ、その点検に宅建士の時間を使わせる帳票の構造そのものが、毎月の確認コストを生んでいます。
売買契約書(37条書面)の記載事項と、重要事項説明書(35条書面)との食い違いを突き合わせる工程は、不動産売買契約書テンプレートの記載必須項目と電子契約・データ化の進め方で解説しています。
エクセルで回せる範囲と、次の一手
結論:1件ずつの調査報告書なら、ここまでの設計でエクセルでも十分に回せます。限界が来るのは、過去の案件を横断して探したいときと、複数人で同時に編集するときです。
私たちが帳票のデータ化を進めるときは、次の3ステップで進めます。
- 項目を固定する:35条1項の15の号と、施行令3条・施行規則16条の4の3の対象を、項目IDつきの1枚の項目表にする
- 今の書類と照合する:直近の調査報告書と重要事項説明書を項目表に当て、対応する欄の無い項目と、自由記述に埋もれた項目を洗い出す
- 同じ値を1か所で持つ:調査結果は報告書に1回だけ入力し、重説・社内チェックリストは参照で流す
削減できる時間は、扱う物件種別や1件あたりの調査項目数で変わります。
そのため、ここでは一般化した数字を書きません。
自社の場合にどこから手を付けるべきかは、今の帳票と入力の流れを並べれば判断できます。
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まとめ
物件調査報告書のエクセルは、宅建業法35条1項の号の並びで行を作り、各行に「対応する号」「調査先」「確認資料」「調査日」「状態」の5列を持たせるのが基本です。
特に二号の法令上の制限と、十四号の省令事項(ハザードマップ上の所在地など)は、固定の項目リストで抜けを防いでください。
調査メモ・報告書・重要事項説明書に同じ調査結果を打ち直す運用を続ける限り、食い違いを宅建士が目で拾う時間は件数に比例して増え続けます。
「該当なし」と「未調査」の区別がつかない空欄も、説明漏れのまま書類の中に残ります。
この記事は条文に基づく一般的な解説で、個別の物件における調査の範囲や説明内容の判断を保証するものではありません。
実際の重要事項説明は、宅地建物取引士の確認を経てください。
自社の調査報告書と重説のどこに打ち直しや空欄が潜んでいるかを知りたい方は、初月無料の経営AI診断(通常30万円相当)で現状を可視化し、改善提案までご一緒します。
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よくある質問
- Q. 不動産の物件調査では、どこで何を調べればよいですか?
- A. 大きく法務局・役所・インフラ事業者・現地・売主や管理会社の5か所に分かれます。法務局では登記事項証明書や公図で権利関係を、役所では用途地域や道路種別などの法令上の制限とハザード情報を、水道局やガス会社では供給と排水の状況を確認します。現地では接道や境界、越境を目で確かめ、売主や管理会社からは石綿調査や耐震診断の記録の有無を聞き取ります。
- Q. 調査報告書をエクセルで作るとき、最低限どんな列が必要ですか?
- A. 調査結果の列だけでは足りません。宅建業法35条1項の何号に対応する行か(号)、どこで調べたか(調査先)、何の資料で確認したか(確認資料)、いつ調べたか(調査日)、該当あり・該当なし・未調査のどれか(状態)、の5列を最低限持たせてください。特に調査日と資料の版は後から追えなくなりやすい情報です。ハザードマップのように市町村が改定する資料は、どの版を見たかを残しておかないと、説明時点で最新だったかを確認できません。
- Q. 調査して該当がなかった項目は、重要事項説明書で空欄にしてよいですか?
- A. 空欄にせず「該当なし」と明記するのが基本です。空欄は「調べて該当がなかった」のか「まだ調べていない」のかを区別できず、点検する宅建士が見落とす原因になります。たとえば土砂災害警戒区域や津波災害警戒区域のような区域指定型の項目は、区域に含まれなければ「該当なし」と明記します。一方で水害ハザードマップは、浸水想定区域の外であっても図面上の位置を示すことが国土交通省のQ&Aで求められているため、「該当なし」ではなく区域外である旨と位置を説明します。エクセルでは入力規則で「該当あり/該当なし/未調査」を選ばせると区別がつきます。
- Q. 水害ハザードマップの説明はいつから義務になりましたか?
- A. 宅地建物取引業法施行規則の改正により、2020年8月28日から重要事項説明の対象になりました。水防法に基づいて市町村が提供する水害ハザードマップに物件の位置が表示されているときは、その図面における所在地を説明します。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」とQ&Aでは、市町村が配布・公表している最新のものを用いることが示され、Q&Aでは浸水想定区域の外であっても位置を示すことが求められています。
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