
案件別原価は外注イラスト費だけでは見えません。デザイナー工数を人件費原価として計上する手順と、エクセルが崩れるサインを解説します。
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目次
外注イラスト費だけを見ていても、案件ごとの本当の採算は見えてこない
デザイン事務所の案件別原価は「外注イラスト費」だけでは見えない
案件別原価を外注イラスト費とデザイン料収入だけで管理すると、デザイナーの工数が人件費原価として計上されず実態より黒字に見えます。
外注イラスト費だけの原価表では、デザイナーの稼働時間というコストがまるごと抜け落ちる
弊社が中小のデザイン事務所・制作会社から経営相談を受けてヒアリングすると、案件別の原価表は「デザイン料収入-外注費(イラスト・写真・印刷など)」の一行で組まれていることが多くあります。これでは外部に支払う費用は把握できても、その案件にどれだけデザイナーの時間を投入したかという最大のコスト要素が抜け落ちています。制作会社の原価の大半は人件費であり、ここを計上しないまま原価を語ると、実際には薄利の案件を「黒字案件」として扱ってしまいます。
正しく案件別原価を出すには、デザイナーの稼働時間(工数)に時間チャージレートを掛けた人件費原価を、外注イラスト費・経費と合算して初めて「実質の案件別粗利」が見えてきます。ここを飛ばして外注費ベースの粗利だけで案件の良し悪しを判断すると、修正対応に時間を食う案件ほど実は経営を圧迫している、という逆転現象に気づけません。特にロゴ制作やキャラクターデザインのように「クライアントの好み」で修正回数が読みにくい案件は、この逆転が起きやすい領域です。
なぜ工数がズレるのか 見積もり工数と実績工数の乖離
見積もり時の工数は「肌感」で決まりやすく、修正対応やラフ提案のやり直しが実績で積み増され、原価は着地前提より必ず重くなります。
工数だけを実績に置き換えても、想定していた粗利は20ポイント近く目減りする
たとえばデザイン料80万円の企業パンフレット制作案件(案件A、ロゴ改訂込み)で考えます。見積もり段階ではシニアデザイナー担当60時間・ジュニアデザイナー担当40時間の合計100時間を想定し、時間チャージレートをシニア5,000円・ジュニア3,000円とすると、想定人件費原価は60時間×5,000円+40時間×3,000円=42万円です。ここに外注イラスト費(キャラクターカット6点で20万円)を足すと原価計62万円、想定粗利は18万円(粗利率22.5%)になります。
ところが実際にはクライアントからのラフ修正依頼と色校正のやり直しが積み重なり、シニア80時間・ジュニア55時間の合計135時間まで膨らむことがあります。この場合の実績人件費原価は80時間×5,000円+55時間×3,000円=56万5千円、外注イラスト費20万円を足すと原価計76万5千円、実績粗利は3万5千円(粗利率4.4%)まで下がります。見積もり時の22.5%と実績の4.4%では、20ポイント近いギャップが生まれます。弊社がヒアリングした制作会社でも、見積もり工数だけで案件原価を管理していたため、納品直前になって初めて「黒字のはずの案件がほぼ利益ゼロだった」と判明したケースがありました。
外注イラスト費の紐付けも甘くなりやすい 発注ベースと精算ベースのズレ
イラストレーターへの外注は追加カットで増額しやすく、発注時点の金額のまま原価を締めると外注費を過小計上したまま黒字と誤認します。
外注の追加精算を反映すると、案件Aの粗利はついに赤字へ転落する
同じ案件Aで、キャラクターイラストの外注先に追加カットの依頼が発生し、当初発注20万円だったイラスト費が精算時に5万円上乗せされ25万円になったとします。外注費の合計は20万円から25万円に増え、原価計は76万5千円から81万5千円に、実績粗利は3万5千円から-1万5千円(粗利率-1.9%)まで下がります。発注時点の金額のまま原価表を更新しないでいると、この5万円の下振れに誰も気づかないまま案件が完了してしまいます。
外注イラスト費は「発注書の金額」ではなく「最終的に支払いが確定した精算金額」で案件別原価に反映することが原則です。特にキャラクターデザインやオリジナルイラストは、クライアントの一言で追加カット・タッチ変更が発生しやすく、発注時と精算時の金額がずれるのは珍しいことではありません。精算が確定するたびに原価表を更新するルールを決めておかないと、外注費の下振れは工数のズレ以上に見えにくい形で利益を削っていきます。
案件別原価を崩さない実務手順 工数ログと外注精算の2点セット
工数ログシート・外注精算シート・案件別原価集計シートの3層構成にし、関数で連携させれば崩れにくい運用ができます。
3つのシートをSUMIFSで連携させ、案件別の実質粗利を自動集計する構成
実務上の骨格は、①デザイナーが週次で案件番号ひもづけの稼働時間を入力する「工数ログシート」、②外注先ごとに発注金額と精算金額を別列で持つ「外注精算シート」、③案件番号でSUMIFS集計し人件費原価・外注費・経費を自動合算する「案件別原価集計シート」の3層構成です。工数ログシートは案件番号と担当者、作業時間の3列だけの単純な形式にし、入力のハードルを下げることが継続の鍵になります。
外注精算シートは発注金額列と精算金額列を分けて持ち、精算が確定した時点で精算金額列だけを更新します。案件別原価集計シートはこの2つのシートをSUMIFS関数で案件番号ごとに集計し、デザイン料収入から人件費原価・外注費・経費を差し引いた実質粗利を自動計算します。工数入力をデザイナー任せの善意に頼らず、週次の入力を制作フローに組み込むことが、この仕組みが崩れないための最低条件です。
エクセル管理が限界を迎えるサインと次の一手
案件数が増えてデザイナー間で工数入力の徹底度に差が出始めたら、エクセルでの案件別原価管理は限界に近づいているサインです。
自社の案件別原価の集計フローは、外部の目を入れると棚卸しが進みやすい
エクセルでの案件別原価管理が崩れ始める典型サインは、案件数が増えて工数入力を徹底するデザイナーとしないデザイナーの差が広がったとき、外注イラストの精算増額分の反映が一部の案件だけ漏れ始めたとき、そして月次の案件別原価集計に半日以上かかるようになったときです。この段階まで来ると、どの案件が本当に稼いでいて、どの案件が実は薄利かを、経営者自身が数字ではなく感覚で判断せざるを得なくなります。
自社の工数ログと外注精算のどこまでを仕組み化できているか、どの案件が実質不採算になっているか判断に迷ったら、一度現状の原価集計フローを客観的に棚卸ししてみることをおすすめします。初月無料の経営AI診断(通常30万円相当)で、自社の案件別原価の集計プロセスを可視化し、改善提案までご一緒することもできます。
まとめ|工数と外注精算まで含めて案件別の実質採算を握る
デザイン事務所・制作会社の案件別原価は、外注イラスト費だけを見ていては実態がつかめません。デザイナーの工数を人件費原価として計上し、外注費も精算ベースで反映して初めて、案件ごとの本当の採算が見えてきます。エクセルでも工数ログ・外注精算・案件別原価集計の3層構成にすれば一定規模までは十分に運用できますが、案件数の増加とともに工数入力の属人化という壁に必ず突き当たります。
自社のどの案件で実質粗利が薄くなっているか気になったら、初月無料の経営AI診断(通常30万円相当)で社内の原価集計プロセスを可視化し、改善提案までご一緒します。
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よくある質問
- Q. エクセルで案件別原価を管理する際、最初に何から手を付ければいいですか?
- A. 外注イラスト費の集計欄に加えて、デザイナー一人ひとりの案件別工数を入力する列をまず作ってください。多くのデザイン事務所のエクセルは外注費とデザイン料収入だけで原価を出しており、デザイナーの稼働時間を人件費原価として計上していないため、実態より黒字に見えます。工数×時間チャージレートで人件費原価を出す列を追加することが最初の一歩です。
- Q. デザイナーの工数はどのくらいの単位・頻度で入力すればいいですか?
- A. 30分単位で、案件ごとに週次で本人が入力するのが実務的です。月末にまとめて記憶で入力すると修正対応やクライアントとの打合せ時間が抜け落ちやすく、実績工数が見積もり工数と同じ数字になりがちです。週次入力にすると、修正対応が膨らむ案件を早い段階で把握でき、原価の下振れに事前に気づけます。
- Q. 外注イラスト費は発注時の金額と精算時の金額、どちらを案件別原価に反映すべきですか?
- A. 最終的に支払う精算ベースの金額を採用してください。イラストレーターへの外注は追加カットや修正依頼で当初発注額から増額することが多く、発注時点の金額だけで原価を締めると外注費を過小に見積もったまま黒字と判断してしまいます。精算が確定した時点で外注費シートを更新する運用にしてください。
- Q. エクセルでの案件別原価管理はいつ限界を迎えますか?
- A. 案件数が増えてデザイナー間で工数入力の徹底度に差が出始めたとき、外注イラストの追加精算分の反映漏れが常態化したとき、そして月次の案件別原価集計に半日以上かかるようになったときが典型的なサインです。この段階まで来ると、どの案件が本当に採算に乗っているか、経営者自身が数字を信じきれなくなります。
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